米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2026年6月8日月曜日

Emory GBSの目玉:Impactプロジェクト

こんにちは。CO2027のTSです。5月に1年次を終え夏休みの旅行第一弾からアトランタに戻ってまいりました。6月はワールドカップなどのイベントもあり、夏休みを満喫したいところですが、今回は当校MBAの目玉科目であるImpactについて私自身の学びの整理も兼ねて経験を共有したいと思います。

■Impactの概要

ImpactはEmory GBSにおける特徴的なプログラムの一つです。1年次のコアターム(秋学期)では全員が共通して理論部分を学び、その後春学期の実践部分で各プロジェクトに分かれて取り組みます。

プロジェクトのカテゴリーは年度によって異なりますが、今年は経営戦略、マーケティング、オペレーション改善、企業価値評価・投資判断、不動産の5つに分かれていました。学生は各カテゴリの中から選んだプロジェクトにアサインされ、春学期の約4か月間をかけて実践に取り組みます。

コンサルティングへの就職に強い当校ならではのハンズオンプログラムであり当校の目玉科目と言ってよいと思います。またこれを一つのステップと捉えて夏のインターンシップに臨む学生も多く、負荷は高い授業です。

■プロジェクトの進め方

守秘義務の関係で詳細は省きますが、私のチームは米国の大手外食企業の成長戦略に関するテーマを担当しました。

私自身のバックグラウンドは非鉄製造業の営業職です。そのため外食業界は全く毛色の違う分野でした。一方で対象企業は規模が大きくコーポレートアメリカの文化に触れられるのではないかと考えたこと、また企業戦略に関わるテーマに取り組みたいという考えからこのプロジェクトを選びました。

進め方については、3月初旬に中間報告を行い5月にはクライアント向けの最終報告と学内での発表の2回を行う点以外は、例えば顧客とのミーティング頻度などもクライアントによって異なります。私たちの場合はまず大きなテーマが与えられ、それをチームで議論しクライアントと適宜すり合わせながらリサーチスコープと実際のリサーチに落とし込んでいきました。

また今回のクライアントはImpactへの参加が初めてだったこともあり、かなり意欲的で通常の報告機会に加えて週1回の報告・相談ミーティングが設定されました。プロジェクトではコアタームで学んだロジックツリーやクエスチョンツリーなどのフレームワークも使いながら問題の特定、リサーチスコープの決定、調査、提言という流れで進めていきました。

Impact のざっくりスケジュール

■難しかったこと

のプロジェクトで特に難しかったのは与えられたテーマから論点を絞り込み実際のリサーチ内容に落とし込むこと、またそれをチーム内とクライアント双方で合意しながら進めることでした。

今回のテーマは複数の海外市場を対象とした成長戦略であり、具体的には既存の外食チェーン店を若い世代にとってより魅力的な体験の場へどう進化させるかというものでした。ただ具体的にどの市場を対象にするのか、どの競合を見るのか、店舗体験・商品・ブランドのどこまでをリサーチ対象にするのかで、かなり労力を使いました。

特に1月から3月初旬の中間報告までは、リサーチスコープが広がったり方向性を固め直したりする場面が多く、かなり大変でした。ExcelやPowerPointで目に見える成果物を作る前にそもそも何を問うべきかを議論する時間が長く続いたため、非ネイティブとしてはストレスを感じる局面もありました。

またクライアントミーティングのリードにも苦労しました。ミーティングのリードは基本的にチームメンバーで順番に担当し、私も3回ほど担当しました。MBA前には海外営業で米国の顧客とも相対していたため、クライアントとのやり取りにはある程度自信がありましたが、実際に米国のドメスティック企業とプロジェクトを進めてみると議論の進め方や合意の作り方は想像以上に違いました。

日本にいた時の米国顧客とのやり取りはあくまで自社と顧客との関係性の中でのものであり、米国企業の会議文化や意思決定の進め方に深く触れていたわけではなかったのだと思います。米国のワークカルチャーについて話を聞くことはありましたが、実際に自分で議論や合意形成をやってみるのは別次元の経験でした。担当者や関係者が変わると前提や優先順位も変わる中で、誰とどの段階で合意を作るのかを考えながら進める必要があり、この点は自分にとって畑違いの分野であったことも含めて大変でしたが、非常に良い経験になりました。

学内発表後の集合写真

■Impactを通じた学び

貴重な経験をたくさんしたのですが、その中で3つに絞ると次の通りです。

一つ目は、自分で考えることの大切さです。今回、外部コンサルタントの立場で取り組んでみて、どれだけ時間を投下しても自分が実際にその仕事をしていない業界や立場を外から想像することには限界があると感じました。戦術レベルでは理解できることもありますが、オペレーションの実態や組織のカルチャーまで根ざして実効性を伴うことは簡単ではありません。これを踏まえて、自分の会社の戦略や意思決定については外部の知見を活用しつつも、事業や現場を理解している自分たちがグリップして考えるべきだと再認識しました。

二つ目は、マネジメントにおける他者の良いところを見ることの大切さです。チーム内では意見や進め方が異なる場面も多くありましたが、分析の正確さ、資料に落とし込む力、発表で説得力を出す力など、貢献には様々な形があることを実感しました。自分の物差しだけでチームメイトを判断するのではなく、最終的にたどり着くべきところに向けて、それぞれの強みをどう活かすかを考えること、その視点を頭に置くことが大事だと感じました。この点は教科書的にはよく言われる一方で、綺麗ごとのようにも感じていました。しかし、自分自身が留学生という立場になったこともあり、ようやく腹落ちした気がします。

三つ目は、コーポレートアメリカの文化を身をもって学んだことです。今回、米国企業とのプロジェクトを通じて日本での仕事とは異なる部分を多く感じました。一方で、丁寧に前提を揃え関係者の認識を合わせながら進める日本的なやり方が活きる場面もあるのではないかとも感じました。米国でビジネスを進める上で、何を外してはいけないのか、逆にどこはスピードを調整して丁寧にやるべきなのか、その感覚を少し掴めたことは今後の私のキャリアを考えても有意義な経験だったと感じます。

以上が、私のImpactでの経験と学びです。今回書きながら大変だった場面も思い出しましたが、実務、チーム、英語、そしてアメリカ企業との向き合い方を一度に試された点で、MBAでなければ実現しなかった経験だったと思います。

CO 2027 TS

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2026年3月24日火曜日

ワシントンDCで公共政策の授業に参加:企業と政策の関係を考える

 こんにちは! CO2027のTSです。先日1年制MBA、またフルタイムMBA Round 2の合格発表がありました。合格された皆さま、本当におめでとうございます。

さて、今回は春休み期間中にワシントンDCで行われた、Washington Campusという公共政策と企業活動の関係を学ぶ集中講義についてご紹介します。

■概要

このプログラムは3月9日から13日までの5日間におよぶ集中講義でした。内容は議会、行政機関、規制、メディア、通商政策など幅広いのですが、単なる制度の説明ではなく企業が政策形成にどう向き合い、どう関与していくかを実務家から学ぶ構成でした。講師陣は元政府高官を中心に主要メディア関係者、ロビイスト、大手企業の渉外・対政府対応の責任者など、ワシントンDCの各分野の第一線で活躍してきた方々が多く、かなり現場感のある内容だったと思います。

授業では議会と行政府による政策形成の難しさ、戦略的な規制対応と政策提言の重要性、メディア・ソーシャルメディアと政策、米国通商政策の変化、規制プロセスの理解などが扱われました。

授業は講義が中心です

■企業×行政の観点を考える

前々から参加を楽しみにしており、関心を持って各講義に参加したので学びは書ききれませんが、特にアメリカでは企業活動と政策との距離が想像以上に近いことが印象に残りました。中でも感じたのは、企業が政策の影響を受ける存在であるだけでなく、その形成過程に関与することがごく自然な実務として捉えられていた点です。

政策提言やロビイングを扱った講義では、企業による対政府対応は一回限りの要望ではなく、継続的な関係構築と情報提供の積み重ねとして説明されていました。私自身、金属資源を扱う仕事に携わってきたため、行政や立法が事業に影響すること自体は比較的身近に感じていましたが、アメリカでは民間企業が行政や立法に働きかけることが、より自然で、より日常的な実務かつ企業の責任として位置づけられていた点が印象的でした。

また、単に要望を伝えるだけでは良いロビイングにならず、自社の投資や事業が米国経済や地域社会にどのような意味を持つのかを、相手に伝わる形で説明することの大切さも印象に残りました。授業ではこれを 「Narrative:物語」 と呼んでいましたが、単なる「ストーリー」ではなくて、自分たちの存在意義や貢献を、相手が理解しやすい形で筋道立てて示すことだと理解しました。これは政府だけに向けた話ではなく、メディアや地域社会も含めて、自分たちが何をもたらしているのかを継続的に伝えていく、という考え方です。政策提言も、単に政府に直接働きかけるだけで完結するものではなく、メディア対応、業界団体の活用、他社との連携、さらに地域の有力者や市民レベルでの支持形成まで含めた、幅広い戦略として捉えられていると理解できました。

DCでは至る所で桜が推されています

■米国市場における日本企業

プログラム中には、ジョージア州選出の上院議員とそのスタッフにお会いする機会もありました。これはジョージア州関係者向けイベントの一部として設けられたもので、議員本人の話を聞いた後、写真撮影や政策スタッフへの質問もできたのですが、こうした接点がオープンに設けられていることは日本と異なる点であると感じました。

少し話は変わりますが、こうした接点も含めて講師や参加者とのやりとりを通じて感じたのは、日本を筆頭に一部のアジア諸国の対米投資や米国経済への貢献が投資規模に見合うほどには十分認識されていないのではないか、ということです。よって先ほどの話に戻りますが、雇用、地域経済、産業基盤への貢献に関する発信を行政のチャネル任せにせず、民間としても米国の行政や地域関係者にしっかり発信していくことの重要性を強く感じました。

なお、関税については各講義でかなりホットな話題として、やや批判的に取り上げられていましたが個人的にはこの件について報道以上の新たな発見があったというより、これはあくまで一つの政治的イベントにすぎず、その背後にある現政権の狙いやそれを支持する人々の背景を見極めることの方が建設的だ、との考えに改めて至りました。

特に日本企業に籍を置く身として重要だと感じたのは、自分たちがその市場に提供できる価値を過小評価せず、一方で米国経済や地域社会への貢献をNarrativeを持って発信し続けることです。とても当たり前のことのように聞こえますが、これを米国の地で体感できたのは非常に大きかったと感じており、今回の経験はここでの学びにとどまらず、今後の自分のキャリアを通じて大きなテーマになる予感がしています。

CO 2027 TS

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