米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2016年2月22日月曜日

アメリカに2年間留学したら英語はできるようになるのか?

海外MBA留学に臨むにあたり、エッセイに記載するような志望動機とはまた別に、英語ができるようになりたいなあ・・・という思いをお持ちの方も少なくないと思います。私もその一人で、英語力の向上を目標の一つに据えておりました。本稿では、”留学したら英語ができるようになるのか”という古典的な問に対し、入学から本稿までの約1年半の体験談を通じてお答えしてみようかと思います。

最初に結論を述べてしまうのであれば、答えは(根も葉もないですが)”人による”です。もともとの英語力、海外生活経験、社交性、年齢等々、留学とは無関係の要因で決まってしまう点も少なくはないと思います。本稿は、MBA留学が英語力にどのように影響するのか、との観点でご覧下さい。

Reading
殊にこの分野は日本人の方が強みを持つところでもあり、TOEFL等でも得点源にされている方も多いと思います。私は、留学を通じて、「意外とReading力が上がる」との印象を抱きました。
留学当初には英語で配信される一通のロジ案内を理解することに苦労したり、数ページ程のcase studyを前に辟易していたり、授業中に提示されるスライドを理解するために同じ文章を何度も目で追う必要があったり、と、先も思いやられる状況でしたが、経験を積むにしたがってアレルギー(=「うわ、英語で書いてある。嫌だな。」といった感覚)が低減し、趣旨を掴むスピードが上がってくるイメージです。
(若干本旨とは外れますが、本留学を通じ、学問関連の情報の量と新鮮さに関しては英語がかなり上と感じました。特に精度の高い情報については(何かしらの音源等よりも)論文に記されているケースも多く、Readingのスキルはかなり重要だと思います。)

Listening
Readingとは対照的に日本人が苦手意識を持つ分野であると認識しており、留学を通じた伸びという観点では、「Listening能力が要求される状況によって伸び幅が異なる」という印象です。
具体的には、授業等において一人が多数の人に話すという状況、即ち目的や方向性が定まっており適宜スライド等の補助的情報源がある場面におけるListening能力は伸びるものの、多人数が同時並行的に話す状況、所謂グループ内での雑談やオープンディスカッションにおけるListening能力の伸びは限定的といった感じでしょうか。特にアメリカのディスカッションは、(日本における報告式のものとは対照的に)積み上げ式のものが多く、それなりの準備をして行っても、論点が予想されているものと違っていたり、また議論の方向性が変わったりするとそれに付いていくことが難しかったりします。

Writing
Writingについては、「量を書くことに対する抵抗感がなくなり、日本では習わなかった便利な表現を知ることができるが、文法や言い回しの精度が上がっているかどうかは分からない」といった印象です。
MBAにおいては授業の提出物としてそれなりの単語数のものを求められることは少なくありません。私は留学準備中の時期においては500 wordほどのエッセイを前にたじろいだり、また留学初期においては、定性的な”書き物”系のレポートについてはアメリカ人の友人に頼りっきりなところもありました。ただコア授業が終了してしまうと自力で何とかしなければいけない場面も増え、またそれなりに説得力のある内容を構築するためには文章量も多くなりがちになり、そのうち文章の量がボトルネックにはならなくなるといった感じです。また、アメリカ人学生の書いたレポートやメールの文面には便利な表現も多く、それを盗むことで表現面での厚みを持たせたり、また砕けたコミュニケーションを円滑にすることが可能となります。
ただ、如何せん英語学校では無いので、成果物に対して文法チェックが入ることは無く、果たして文章力が上がっているのかというとそれを確認する術はあまりありません。アメリカ人の友人が私の表現を修正してくれた時に、何が違うのか聞いてみたりすることもありますが、「なんとなく」といった反応も多く、そのような情報を応用して活用するのは難しかったりします。(日本語で「が」と「は」の違いを問われても答えにくいのと同じような感覚でしょうか。。)
(因みに、私は利用したことは無いですが、エモリーには留学生を対象にしてレポート等の文章チェックをしてくれる機関があるようで、そこを利用すれば文章の精度も上がるかもしれません。)

Speaking
英語を流暢に話せたら格好良いなあとは未だに思っているのですが、留学を通じた感想としては、「発音は重要でないことに気づき、流暢で無いなら無いなりにどのように伝えればいいかを考えることを通じて意思疎通のレベルが上がる」といった感じでしょうか。
上記Writingのところで述べたのと同様の趣旨で、(英語学校では無い)MBAでは先生(や学生)が発音を直してくれることは滅多にありません。こちらの発言を聞き取ってもらえなかったら”What?"と聞き直されるか、趣旨を曲解されたまま答えが帰ってくるだけです。ただ、良く言われている通り、正しい英語(の発音)というものはやはり存在しないようで、人種や出身国によって発音は異なり、その上でコミュニケーションが成り立っています。本留学を通じて色々な人種・出身国の方と触れ合い、大切なことは、”論理的で分かりやすく、且つ伝えたいという意志が含まれている”ことなのかなと感じました。プレゼンをするのであれば、全体の構成を考えて、口頭の説明が無くとも趣旨が伝わるスライドにして、事前の練習を重ねる。日常会話であれば、背景を説明し、感情を込めて話す。このような点を抑えることで、”綺麗な”英語を話せるようにはならなくとも、コミュニケーションを取る能力が上がる、といった印象です。


冒頭に記載させて頂いた通り、これらの英語力の伸びについては”人による”側面が大きく作用していると思います。留学前の経験・能力のみならず、留学中における行動によって左右される面も多く、例えばパーティや飲み会に積極的に参加することで雑談におけるListening能力を伸ばしたり、個人的に英語レッスンを受けることで発音を改善させることも十分可能であり、そのような環境は確りと揃っていると思います。


社費留学を考えられている方にとってはclass of 2019 (2017年入学)に向けた社内選考が終了しつつある時期だとも思いますし、留学を通じて得たいものの一つに英語力を掲げられている方も少なく無いと思います。本稿においては、”留学すれば英語力も上がるよ!”といった青写真をお見せするだけでなく、実体験を踏まえて分野別にできるようになることとそうでないことを掲載させて頂きました。留学の意思決定や留学地域選びの一助となれば幸いです。

Kokoro