受験生の皆様におかれましては面接準備・最後の一押しのテスト準備等で多忙のことかと思いますが、あとひと踏ん張り頑張ってください。
私はといえば卒業があと3か月のところまで迫り、GBSでの2年間自分が何をしてきたのか、またあと少しの時間で何ができるのかということを否が応でも考えさせられます。今回はこれまでを振り返りながら少し違った視点からゴイズエタの魅力をお届けできればと思います。
思えば2年前、私は出願校を選ぶに当たり"Energy Business"特に伝統的な電源(火力・原子力)に関する業界動向・産業構造も学べるかという点も考慮していました。
Energyを標榜するプログラムを提供するMBAは数多くあるのですが、内容はOil&GasやRenewable Energyに関する講座が多く、そのビジネススクールの立地によって内容が左右される傾向を感じました。
そんな中、たまたまGBSでもEnergyを学べそうだということに気づき、縁あって入学することとなったのですが、実際に様々なリソースを活用して電力事業に関して学ぶことができておりますので、以下その機会についてご紹介したいと思います。
1 Ray Hill
Professor. Raymond Hill |
■Managerial Economics
こちらはコアカリキュラム(1年生の秋学期)に全員が履修するミクロ経済学の授業です。基本的なミクロ経済学理論をビジネスに活用するという文脈で学んでいくものですが、中には完全競争市場や損益均衡点の分析等で実際の電力価格決定に関する事例や電力会社の経営層としての経験をもつ彼独自の解釈が盛り込まれ、実際のビジネスでも応用できる内容になっていると思います。
■Economic Environment of Business
この授業は選択科目で2年生の秋学期に履修することができます。前半はマクロ経済学、後半はミクロ経済学の二つのパートから構成されていおり、エナジーに関しては後半で学ぶことができ、コアのManagerial Economicsでカバーできなかった産業規制、独占の経済、外部経済等のトピックがカバーされます。ここではカリフォルニア電力危機の原因、排出権取引の設計についての講義や、ISO New Englandのエコノミストをゲストスピーカーに米国東北部の電力卸売市場の仕組みについて学ぶことができました。また、授業後にはゲストスピーカーを囲んでの懇談会の機会がある等、アメリカの電力市場構造について基礎から学びたい人には良い内容になっていると思います。
■Project Finance
過去こちらの記事でも紹介されていますが、この授業は選択科目で1年生若しくは2年生の春学期に履修することができます。この授業はProf.Hillの真骨頂といっても過言ではないと思います。彼は電力会社でプロジェクト運営者・借手としての経験を持つと共に、投資銀行での貸手としての経験も豊富に備えています。講義は理論的な説明も勿論のこと、彼の実戦経験(実際彼が関わったプロジェクト)とその過程で知り合った数多くの実務家によるゲストレクチャーが数多く用意されています。最終課題は現実のプロジェクトに関して様々なリスク分析とキャッシュフロー予測等を行いプレゼンを行うというものになっていますが、この中で多くの発電所建設プロジェクトも含まれています。私も現在履修して最終プロジェクトとして、とあるガスタービンコンバインドサイクル発電所のプロジェクトに取り組んでいますが、実際のプロジェクトに関する文書を渡されて分析を行う為非常に実践的だと思います。また、発表までに教授とのコンタクトが何度か含まれていたり、分析に当たって外部の専門家にインタビューが必要な場合はProf.Hillがその人を紹介してくれたりと手厚い指導を受けることもできます。
また、これ以外にも電力に関する特定のテーマを取り扱いたい場合には、こちらに紹介がある通りDirected Studyという形で指導を受けることもできますので、自身の興味にあったカリキュラムの組み立てができると思います。
2 Energy Markets Club
今年のフライヤー。Oil全面ですが内容は多岐に亘ります。 |
またEnergy Market Clubに所属することでAmerican Energy Societyという業界団体に無料でプレミアム会員として登録することができ、世界中のエナジー関連の動向を毎週アップデートできると共に、いくつかのオンライン講座も無料で受講することができます。ビジネスの側面は大学で学ぶことができますが、技術的・理論的な知識をここでブラッシュアップすることもできます。
3 外部情報へのアクセス
先日MichiがこちらでGoizueta Business Libraryについて紹介していますが、こちらを活用して業界の理解を深めることもできます。例えば、S&P Net Advantageでは電力産業の動向に関する最新レポートを読むことができますし、FactsetやThomson Oneといったデータベースを使って企業の財務・ディールの情報に簡単にアクセスすることができます。
また、お隣のGeorgia Institute of Technologyでも毎年エナジー関連のシンポジウムを実施しており、エモリーの学生もそれに招待されることがあります。上記Goizueta Energy Symposiumと同様の形態とはなりますが学外での学びも豊富に活用することができます。
4 Goizueta Marketing Strategy Consultancy(GMSC)
過去当ブログでも幾度となく登場している当校名物プログラムのGMSCですが、実はエナジービジネスを学びたい方にとっても良い機会となりえます。
勿論毎年クライアントが変わる為、必ずエナジー関連のプロジェクトがあるというわけではないのですが、アトランタにはGeorgia Power, General Electrics, Siemensといった電源に関する事業を営む大企業が本社・支社を構えていますのでチャンスはあるのではないかと思います。
私は昨年とある製造業大手のプロジェクトに参加しました。内容はガスタービン発電プラントに関するマーケティングだったのですが、運転データ(=Big Data)を活用したプラント最適化に関する最新の業界の動きを把握することができると共に、プラントユーザーの運転パターン、また、クライアント内のエンジニアも含めた様々な階層の方との意見交換などを実施することができ、予想以上にクライアント・プラントユーザーとの接触の機会が多く非常に有益なものとなりました。
ただ、繰り返しとなりますが毎年クライアント・プロジェクトが変わりますのでその点は要注意です。
5その他
日本の世論では厄介者扱いとなっている原子力発電所。アメリカでも西海岸カリフォルニア等ではその面も否めないのですが、こちらジョージア州ではよりビジネスライクに電源の一つの選択肢として取り扱われているなという印象を受けます。
エモリー大学の位置するアトランタにはInstitute of Nuclear Power Operationsの本部も有りますし、またアトランタに本店を構えるGeorgia Powerも現在ジョージア州内にAP1000を採用してVogtle-3/4号機を建設中です。昨年Vogtle建設現場の見学会が(結局頓挫してしまったが)Energy Markets Club内で企画されたりもしたので、更に電力に関する知見を広げる機会はあると思います。
以上、今回は少し違った切り口でGBSのカリキュラム・機会についてご紹介させて頂きました。
これから冷え込む時期が続きますがくれぐれもご自愛ください。
Sam