米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。
当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。
2015年4月13日月曜日
ゴイズエタMBAでファイナンスを学んだ2年間を振り返る
Class of 2015のマーシーです。5月には卒業し2年間のプログラムに幕を閉じることとなるので寂しい限りですね。私は銀行からの企業派遣でMBA留学しており、思えば2年間ファイナンスの学習に多くの時間を費やしました。以下自分の留学経験からファイナンス学習に役立ったことをつらつらと書いてみました。
MBAの授業で学ぶ
授業は非常に実践的でした。このプロジェクト投資する?この買収やめとく?どんな条件ならやる?みたいな具体的な内容を想定してNPVやIRRと言ったファイナンス指標を計算し、各種リスクを想定して最終的な結論を導く訓練をします。昔若い頃証券アナリストの勉強とかしてましたが、教科書的な内容を暗記するので単調な学習になりがちなのと、どうしても実践性に欠けてしまうところがありました。しかしMBAでは必要最小限のコンセプトを頭に入れた後は、ケーススタディで具体的なシーンを想定して回答を導きます。実際には必要となる情報が十分に揃っていないケースもありますが、そうした場合も情報が手に入るまで待つのではなくて、合理的な前提条件を自分で設定して、とにかく自分なりの回答を導くように指導されました。そして経営層に意思決定させるため、ペーパーやプレゼンで説得力のある説明をするトレーニングを繰り返し行います。
金融の本場アメリカなので資料や教科書類は充実。教えてくれる教授は著名な実績を残した元バンカーや有名なリサーチャー。チームを組むのは投資銀行やファンドへの転職を目指して世界から集まった学生。と、とにかく実践的なファイナンスを学ぶには非常に有意義な環境が揃っています。私自身銀行での投資や融資の経験を通じてファイナンスに関する一定の知識もあったので、MBAプログラム開始当初はファイナンスをある程度やったらストラテジーやマーケティングを学ぼうと思っていたのですが、この環境で学べることが多く、気付いたらすっかりファイナンス漬けになっていました。
ゴイズエタだとやはりオススメはInvestment Banking、Advanced Corporate Finance、Project Financeでしょうか。また、Global Macroeconomics PerspectivesやManagerial Accountingなど経済や会計などファイナンス周辺科目から学ぶことも多く、留学前と比べ幅広い視点でビジネスを分析することができているのではないかと思っています。
授業の外で学ぶ
さて、授業で学ぶことは実ビジネスにおいて重要な知識なのですが、実際のビジネスではケーススタデイのようにすでに必要なデータがきれいな状態で揃っているなんてことはありません。専門的なデータベースで情報を集めたり、集めた情報を使ってエクセルでモデリングやセンシティビティ分析をすることが必要とされます。エクセルの分析を行う中で、追加での情報収集が必要であることに気付いたり、そもそもプロジェクトが没になったりして、敢え無く 分析結果がお蔵行きとなるケースも少なくなく、収集するデータの量と比べると、実際に社内外の資料として使われる情報や分析結果というのは非常に少ないものになります。言い換えれば、いかにして効率的に情報を収集し、素早く分析を行うかが重要となり、また、こうしたスキルが上司や顧客に対する提案能力の一部を成すこととなります。
ゴイズエタでは、専用端末でBloombergを利用する以外に、FactSetやThomson One、Factivaなど金融関連の情報データベースが個人のノートPCで使えるようになっており、プロフェッショナルデータベースでの情報収集を訓練することも可能です。ほしい情報が見つからない場合や使ったことのないデータベースでの検索がうまくいかない場合はデータベースに精通したライブラリアンによるサポートを受けることもでき、マンツーマンで懇切丁寧に教えてくれます。情報過多の時代にあって一層情報収集能力の重要性が高まる中で、信頼できるデータソースから効率的に情報を集める能力を磨くことが重要なスキルアップになります。
その他には、Wall Streetで勤務経験のある元投資銀行マンがファイナンシャルモデリングについて教えてくれるTraining The Streetのワークショップがビジネススクールの学生を対象として毎年2~3回開催されており、ValuationやLBO/M&A分析をエクセルで素早く行う能力を身につけるトレーニングを受けられます。MBAの授業は確かに有用なのですが、授業と実ビジネスを橋渡しするこうしたスキルを磨くことで、ビジネスに復帰した際に学んだことをスムーズに発揮する助けになるのではないかと思います。
実践で磨く
具体的な知識やスキルが身についてくれば後は実践的な場面に出てアウトプットしていくことが重要です。1つの方法としてはレクチャー形式の授業から離れ、実際に自分で手を動かして自主研究を行うDirected Study(またの名をIndependent Study)があります。Directed Studyはファイナンスに限られたものではありませんが、担当教授にお願いしてセメスターを通じて特定のテーマについてリサーチを行うものであり、私は米国の電力自由化地域における卸売市場の動向や発電事業の収益性についてリサーチを行いました。関連文献のレビューや業界プロフェッショナルへのヒアリング、ファイナンスモデルでの分析など、今までの知識やスキルを総動員してリサーチに当たります。ファイナンスを切り口にしてこうした今現在起こっているテーマに取り組めることも非常に有意義でした。
またDirected Studyの他にはケースコンペティションも重要な腕試しの場となります。ベンチャーキャピタリストに扮して実際の起業家に対してデューデリジェンスを行い、投資提案や条件交渉を行うVenture Capital Investment CompetitionやM&Aやスピンオフ、株主還元など様々な選択肢を考慮して最適な財務戦略を経営層に提案するInvestment Banking Competitionなど様々な内容でケースコンペティションが開催されています。ファイナンスやモデリングの知識が一層鍛えられることは言うまでもありませんが、限られた時間内で効率的に進めていく必要があるため、リーダーシップやチームワークと言ったスキルも重要となります。また現在活躍中の実務者からフィードバックが得られるため、授業とは異なる視点で自分を見つめ直す良い機会になったと思います。
以上長くなりましたが、2年間のファイナンス学習について書いてみました。読者の方の参考になれば幸いです。私はもうすぐ卒業してしまいますが、これからもゴイズエタの日本人会は益々の発展を遂げていくものと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
マーシー