米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2024年1月2日火曜日

アフターMBAについて(卒業後、転職)


お久しぶりです、Class of 2023YMです。

同級生のTFさんがPost MBAとしてアメリカ駐在のご経験を寄稿されていましたが、私からは、MBAを経て、厚生労働省から外資系大手製薬企業の日本法人に転職した経験をシェアさせて頂きます。

〇 Why転職?

転職は偶然の産物でした。

もともと、私がMBAを目指したのは市場メカニズム利活用したヘルスケアイノベーションのための医療政策を作る!という目標があったので、厚生労働省に帰任するつもりでした。そして、その背景として、私は交通事故による身体障がいを抱えており、自身の経験から、患者・障がい者が直面する社会のバリアを排除したい、日本のDiversity, Equity, Inclusionのレベルを引き上げ強い社会にしたい、そんな思いがありました。 

一方、家族も大切でした。

妻と私の地元である関西から、東京→アメリカと遠く離れて暮らす私たち家族は、関西在住の両親のことをコロナ渦を経てさらに気にするようになりました。と同時に、両親側も私たちに関西に帰ってきてほしいという願いを持っているという気持ちをなんとなく感じ始めました。また、役所での業務は激務で、私が家族を顧みられない日々を過ごすことは正しいことなのだろうかという思いもありました。 

その二つの思いの間で私は挟まれながら過ごすMBA生活の中で、アメリカに本社を構える今の会社と出会いました。

あるとき、この会社の人とオンラインで意見交換した際、ヘルスケアイノベーションのための医療政策を民間企業の立場からリードしようと奮闘しているという話を伺いました。そして、イノベーションには人種や国籍、LGBTかどうかや、障がいをかかえているかどうか、等にかかわらず、あらゆる背景の人が力を合わせることで達成できるものだ、という考え方、そして、仕事だけできても家族を犠牲にしている人はこの会社では全く評価されない、という話を聞いて衝撃を受けました。

さ・ら・に、幸運にも、その会社の日本法人本社は私の親がいる関西にありました。 

かくして、2つの思いで挟まれていた私の目の前に突然、思いもよらぬ選択肢が現れ、家族会議の結果、転職を決断しました。 

〇 What’s my New Role?

これといった転職活動もせずに転職した私ですが、与えられたRoleは、非常にユニークなものでした。 

まず、MBA採用なのにR&D側での採用でした。

それは、厚生労働省で薬事を担当していた経験やPhDを持っていたという事情はありますが、現在の複雑な時代を駆ける製薬企業にとって、心臓部であるR&D部門においてもMBA的な発想を求めていたという事情があります。 

次に、Roleも非常に珍しいものです。

私のRoleは、「薬事政策」、つまり“魅力的な薬事制度を日本に構築するための戦略とaction planを立案、そしてその実行”というものです。
このRoleには、マクロ(社会規模の利益)とミクロ(組織レベルの利益)、二つのスケール感で、産学官のそれぞれのステークホルダーがwin-win-winとなれる方法を探し、そして自社の利益に貢献することが求められています。 

最後に、私の部署は入社直前にできた部署で、上司と私の2人だけ、つまり、ほぼ社内ベンチャーというユニークな状態でした。

まさに、更地から、社内全体に「薬事政策」を実行するための組織づくりが求められているという、アントレプレナーシップが必要な状況です。 

こんな感じで、PhDコースで学んだサイエンスという武器、厚生労働省で学んだ政策立案の武器、そして、MBAコースで学んだビジネススキルの武器、をふんだんに試せるRoleで、毎日ワクワクしながら仕事をしています。

〇 Advice to 在学中の自分

もし今、在学中の自分にアドバイスをするなら何をするだろう、と考えてみたら、以下のアドバイスを過去の自分に送りたいと思います。 

<授業>

    Professor. Suhas A. SridharanCorporate Political Strategyを受講したのはとても良い選択で、幅広い業種の民間企業からの公共政策のための活動や、その戦略立案の方法を学べたことはキャリアにとても役に立っています。

    MarketingFinanceをしっかり学んだことは今の職務の糧になっています。ビジネスの本質は「Value」と「Effort」を交換すること、そのために何をすべきか、Riskをどうマネジメントするか、という話で、Marketing職やFinance職ではない転職後のRoleの中でも、これらの考え方はとても役に立っています。

    Professor. Charles F. GoetzEntrepreneurshipの授業も役に立っていますよ。あなたは、偶然にも社内ベンチャー的な部署からキャリアをスタートしますので、部署をどのように立ち上げていき、ステークホルダーとどうコミュニケーションをとるべきか、彼の授業から学んだおかげで今の私はスタートダッシュを切ることができました。起業する予定はなかったと思いますが、受講していて正解です!

    一方、Data scienceIT系の授業はもっと勉強出来たらよかったと思います。製薬会社は徐々に情報を売るビジネスに移行しつつあります。そして、薬事政策のRoleは深いサイエンスとビジネスを理解する必要があるので、システムの話やDataの知識を業種幅広く学んでおけば、もっとスムーズに仕事を行えたかもしれません。今、学び続けているところですが、過去の自分であるあなたは今学ぶことをお勧めします。 

<課外活動>

    インターンシップは行って大正解です。本当につらかったと思いますが、頑張ってよかったと思います。イノベーションの話はやはりバイオベンチャーやエコシステムを理解していることが必須ですし、アメリカのMBA出ているなら知っていて当然だと期待されて、みんな何でも聞いてきます。インターンシップで得た知識や分析結果、築いた人脈は大いに役立つので、頑張って取り組んでください。

    一方、学校のClub活動にも積極的に参加すべきでした。インターンシップや家族、授業そのものが忙しすぎて余裕がなかったのは理解します。しかし、同級生はあなたの英語力なんて気にせずに、声をかけてくれていたのに、「今日は疲れていて英語が話せない」とか「何を話したらいいのか考えるのが今日はしんどい」とか、「共通の話題をつくるのが面倒くさい(好きでもないのにアメフトのニュースを理解するのはしんどい!)」という事情で仲良くなれる機会を逃したのは非常にもったいない!しかし、その一方で、エモリーの教授陣や、ヘルスケアイノベーションを志す数人の同級生と夢を語り合ったり、アメリカで活躍する日本人の仲間たちと親交を深めたことは財産となっているので、そこはがんばったと思います。 

<プライベート>

    家族旅行をたくさんしたり、家族や同級生家族と一緒にたくさんの思い出を作ったりしたのはとても良かったと思います。家族の絆が深まりました。どんどん行いましょう。

    ジャンクフードの食べすぎは気を付けましょう。帰国した私はみんなに「顔が丸くなった?」と言われています。。。

 

以上、長くなりましたが、アフターMBAの所感としてはこんな感じです。もし、気になる方がおられましたら、LinkedInとかからご連絡ください。ヘルスケア関連の志望者、転職希望者の相談、welcomeです。みんなでより良い医療を作りましょう。

 

YM