米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2016年1月17日日曜日

GBS

皆さん、こんにちは。Class of 2016のぐっさんです。読者の皆様の多くは、これからエモリーのインタビューを控えてこのブログをご覧になっているところかと思います。受験には直接お役に立たないかと思いますが、息抜き程度になれば幸いです。

1月~4月はClass of 2016にとっては最終セメスターであります。私も含め皆が社会人として復帰する前に、やり残したことが無いように、青春を謳歌しているところです。私は、新年早々にワシントンで開講されている選択科目を受講することで2016年をスタートさせました。毎日朝8時過ぎから18時位までノンストップで続く講義は非常にハードではありましたが、アメリカ企業がどの様に政治と関わりながら事業運営して行くのかを集中的に学ぶことが出来たのは有意義でした。また、授業の後にはClass of 2016の愉快な仲間たちと居酒屋に行ったり、NBAを見に行ったり、観光スポットをこれでもかという位に回ったのは非常に良い思い出となりました。気分的には卒業してしまったのですが、これから始まる選択科目はどれを取ろうか迷う位にラインナップが豊富でして、最終学期にしてまだまだ学びの機会が沢山あることを本当にうれしく思います。

さて、今回は私が書く最後のブログ(死ぬ訳ではないです)ですので、改めてエモリーでMBAを取る魅力を端的に表せないかと考えてみました。小一時間悩んだ結論が、DAIGO風(ご結婚おめでとう御座います。)に言うのであれば、それはGBSです。え?何それ?と思われたでしょうが、これはG(Great)で、B(Brilliant)で、S(Supportive)の略です。アドミッションの方々も長年の経験で分かるのでしょうか、不思議とそういった人間達が世界中から集まってくるのがエモリーの魅力ではないでしょうか。そのMBAも残り数か月かと思うととても悲しくて、留年しようかと思うのですが会社に怒られそうなので今のところ踏みとどまっております。

最後になりますが、2016年は我々Class of 2016にとってはMBAでの経験を糧により一層社会で飛躍する年にしたいと思っておりますし、皆様にとってはClass of 2017と共にエモリーでしか出来ない最高にエキサイティングな1年を是非アトランタで過ごして頂ければと願っております。


ぐっさん

2016年1月16日土曜日

MBA生活を振り返る


Don’t try to stop the flow of a river…

 遠い昔の記憶である。
夏の終わりの公園で、日が沈み少しずつ空が暗くなっていくなか、やかましいセミの声にかき消されそうな弱々しい声で当時付き合っていた外国人の女性がそう言ったことがある。
今となっては果たしてなぜ彼女がそのような言葉を投げかけたのかはもちろん、当時の私がどのように答えたのかも思い出すことができない。
記憶というのは頼りないものである。ごっそりと前後の文脈が抜け落ちているくせに、こんな風にある一言や一瞬の会話だけ記憶に残っていることがある。確かな記憶は、この彼女の言葉と、当時の自分には彼女がいったい何を言わんとしたのか理解できなかったということだけである。

 その後長い時間が流れた。そして私自身が当時の彼女の年齢に近づいてきた頃になってようやく、当時の彼女の気持ちがわかるようになった。おそらく彼女は形のないものに無理に形を与えようとすることの虚しさを言いたかったのだ。流れゆくものに自分の望む形を与えようとしても、その願望は指先を流れ落ちるだけなのである。簡単なことなのだが、若かった自分には願っても絶対に叶わぬ試みが存在するということが想像できなかった。そして、それをわかるようになるまでに、あまりにも長い時間がかかってしまったのである。

* *  

 思えば、何かを「わかる」、というのは途方もないことである。ましてやそれが目に見えないものであるとしたら尚更である。自分自身がどれほど変わったのかというのも、鏡がなければ自分の顔すらわからないのと同じで、実はなかなか自覚することが難しい問題の一つである。
 この彼女の言葉のように、当時よくわからなかった誰かの言葉、というようなわかりやすいテストがあれば、自分の考え方や感じ方がどう変わったのか知る手がかりになるが、そういった手がかりがそのあたりに都合よく散らばってくれているわけでもない。

アメリカでの留学生活を振り返ってみても、自分自身MBA留学に来る前は、留学を契機になにがしか変化するところがあるのではないのかと考えていたが、もはやあと半年弱で卒業という段の今に至って、いったい何がどれほど変わっただろうかと自問してもなかなか答えは見えない。

* *  

ひとつ思い浮かぶものというと、よくもわるくも、適当さが身についたということだろうか。適当と一口に言っても色々な意味がありうるが、私が最もアメリカに来てよかったと思える点は、そのおおらかさにある。振り返れば、日本にいたころはまさに小さなムラの中でくだらない見栄の張り合いや足の引っ張り合いにあまりにも毒されていた。日本人的自我の弱さとでも言えばよいのだろうか、他人との終わりのない比較と虚栄心の泥沼は、むしろ均質な社会の方が強いのだろう。人種、出自、性別、宗教、いろいろな要素が入り乱れた国で学ぶということは、実は学校で何を学ぶかということ以上に、日本人的な日本人にとっては重大なインパクトを持つ経験になるように思う。

 そして、MBAでの学びについて言えば、この一年半を通して気付いたこと、あるいは思い知らされたものもある。MBAでの学びというのは、「見えないものを見つめる」ことができるようになるための一つの純粋形である、ということだ。
 もとより、「ビジネス」という目に見えるようで実はよくわからない価値判断の集合体のような存在を「学問」として昇華させているアメリカの伝統なのだといってしまえばそれまでかもしれないが、経済、会計、意思決定、コミュニケーション、交渉、そして究極的にはリーダーシップという、目に見えない人間行動の集合としてのビジネスを体系的に学ぶというのは、実は「目に見えないものを見つめる」ための営みの最たるものの一つである。
 GBSに来る以前エコノミストをしていた自分にとっては、ハードデータと関数によって世の中を可視化するという発想がごく普通の感覚だった。リーダーシップなどというような見えもしない上に数値化もできないようなもので時に合理性のない判断に傾くというのは、少なくともエコノミストたちが当然の前提とする「経済人仮説(すべての人は経済合理的に行動する)」とは真逆を行くものである。

目に見えるものあるいは可視化できるものを前提とした合理的な判断によって世の中をとらえようとするエコノミスト的世界観から比べると、現実のビジネスの世界はなんと雑多で、そして理屈で説明のつかないものだろうかと驚かされたが、二年の間に、だからこそMBAでそうした鵺のような「ビジネス」なるものを学ぶことがこれほど意義あるものと見做されているのだろうと、ようやくわかった気がする。形や概念が与えられない混沌の中から有益なものを掬いだす訓練のための装置として、MBAの学びは、20代の2年間を費やしただけの十分な価値があったと思える。

言語がなければこの世界を認識できないのと同様、混沌としたビジネスの現実に向き合う上でも、混沌を混沌のままにしておくのではなく、具体的な方法論と体系だった概念を携えることが求められる。もっとも、そのうえで、「それでもやはりビジネスというものは混沌としている」というのがいまの私の偽らざる気持ちである。だが、人間同士の営みである以上、川の流れは常に変化し、そしてそれはそれでやはり良いのである。

* *  

これが私がこのブログを更新する最後であるが、まだあと1学期が残っている。
1学期を残した段階でMBAについて何か言えることがあるか、そもそも言うべきなのか迷ったが、受験者の参考になるかどうかはひとまず度外視して、自分なりに振り返ってみたつもりである。

おそらく、この後さらに1学期が経ち、卒業を迎え日本に戻ったときに、どのような形であれ、ちくりと痛む後悔の念や、また違った可能性への期待もありえるかもしれない。

だが少なくともいまの私は、アメリカに来て貴重な20代の限りある時間を費やしたことへの後悔の念は一切ない。むしろ、自分の人生や生き方に対する考え方など、日本で暮らしていたときより大きな観点から自分の人生を省みることができたことで、アメリカで過ごすこの2年は、それがたとえ日本で過ごせば得られたかもしれない何かを犠牲にしていたとしても、より良い何かを得る――それがMBAプログラムから直接得られるものであるか、あるいはアメリカで過ごすことで得られる経験によるものかであるかは置いておくが――うえで、代えがたい時間であったと思える。

たいしたことを書くつもりがないつもりが、たいした内容でもないのにひどく長文になってしまった。そろそろ潮時である。これからアメリカでMBA取得を目指す人にとって、その経験が、悔いのないものになるように祈りつつ、筆者は現役学生として語るべきこの場を去ることとしたい。

Ted








2016年1月11日月曜日

Goizueta Business Library

Class of 2016 Michiです。

今回はGoizueta Business Libraryの特徴・利点について紹介させて頂きます。

まず、簡単にWoodruff Libraryについてご紹介します。Woodruffは大学全体の図書館です。非常にきれいで、勉強するには絶好の環境です。明文はされていませんが、場所によって、チームワークをできる場所、自習する場所、読書する場所、ホワイトボードに書きながら学習する場所等が別れています。また、年間を通し、ほぼ24時間365日開館しています。




Goizueta Business Library(以下GBL)は、Goizueta Business Schoolの保有する図書館です。Business Schoolの校舎ではなく、Woodruff Libraryの一階、入口近くに位置しています。



私の考えるGBLの利点は、主に以下3つです。

① 経験豊富なLibrarians
② 豊富なBusiness Databaseへのアクセス
③ リサーチ以外のサービス

① 経験豊富なLibrarians

GBLには5名の専属Librariansが常勤しています。Librariansと聞いても、馴染みの薄い方が多いかもしれませんんが、図書館の管理人のような存在です。GBLでは、5名のLibrariansが授業に限らず、必要な2次情報を文献・データベース・インターネット等から探すことを手伝ってくれます。更に(恐らくアメリカのトップビジネススクールでも唯一と彼女たちは言っていましたが)5名全員が民間企業での勤務経験がある為(3名は投資銀行での業務経験あり)、学術面だけでなく、実ビジネス世界にも精通し、必要な情報を正しく理解し、迅速・的確に提供できる事がGBLの利点でもあります。私も多くのプロジェクトで、必要なデータを探すとき、彼女たちの1人とアポを取り一緒に探してもらう事で、効果的な情報収集方法を勉強させてもらいました。情報があふれる現代こそ、質のいいデータの探し方・見極め方が重要であり、効果的な情報収集方法は、MBAで学んだ最も重要な項目の一つです。


② 豊富なBusiness Databaseと体系的な習得

GBLでは65個を超えるBusiness Databaseを保有しています。ここで言うDatabaseとは、例えばファイナンスデータを扱うFactSet/ Bloomberg/ ThompsonOne、各種マーケットシェアを揃えるMintel、各業界の動向をまとめたHoover/ Datamonitor、統計データを揃え、地図を使ってVisual化までできるSimplyMap(詳細は過去のYuta記事参照下さい)などです。

GBLが各社とライセンス契約を結び、Goizuetaの学生は無料でOn Campus/Off Campusに関わらず利用可能です。私も聞いて驚いたのですが、これらのDatabaseのライセンス契約だけで、毎年 $ 0.5 million(約6千万円!)以上の予算を使っています。これらのDatabaseは毎年一度更新され、品質が不十分と判断されてものは廃止、新サービスが導入され認められたものが追加されます。ここ2年でも、3組の改廃がありました。

また、このDatabaseを活用するために、GBLとMBAコースが連動している事も、特徴の1つだと思います。例えば、1年次の必修科目であるManagement Practiceでは、プロジェクトの中でGBLのDatabaseを活用してリサーチを行う事が過程として組み込まれています。また、私が前期と履修したProduct & Brand Managementでも、ある製品の広告の有効性を図る課題がありました。A社が広告宣伝費を直近半年間、どのようなチャネルでいくら使ったか?競合B社と比較し、何が異なるか?と言う分析をGBLにあるStrategyと言うDatabaseを使って行う事が課せられました。

教授陣やコースとBusiness Libraryがしっかり連携し、効果的にリサーチ手法を体得できるよう、プログラムが構成されている事も、Goizuetaの特徴・魅力だと思います。


③ リサーチ以外のサービス

リサーチ以外でも、ビジネス書だったり、最新のSoftwareに関するレクチャーなども行っている事も、利点の1つです。具体例として、以下を簡単にご紹介します。

1つ目はKindleです。GBLでは2年前からKindleの無料貸し出しサービスを開始し、現在40台以上保有しています。Classic&最新の著名ビジネス書がダウンロードされており、学期中は2週間、夏・冬の長期休みには1か月単位で借りる事ができます。

もう1つはGBL主催の課外レクチャー。先月は、コンサル等の業界で最近普及しているTableauと言う、データを効果的にVisual化するSoftwareについて、GBLが専門家を呼んで、学生たちに使い方の手ほどきをしてくれました。

GBLでは知識やスキルの引き出しを増やすため、様々なサービスを提供してくれています。



上記の3点で述べましたように、GBLでは豊富なリソースを保有し、様々なサービスを提供しています。卒業後にも使えるDatabaseもあったり、長期的な視点で見ても、非常にメリットが大きい点だと、私は感じています。


最後になりますが、受験生の皆様は最後の追い込み時期だと思います。精神的にも最も辛い時期かと存じますが、もうひと踏ん張り、是非頑張って下さい。


Michi

2016年1月6日水曜日

Leading with Integrity

 こんにちわ。KAJIです。私は色々な事情があって他の生徒より半年早く、先月末に卒業して日本に帰国いたしました。今回は私の学校生活で最も印象に残ったクラスであるLeading with Integrityについて紹介させて頂きます。本クラスは2年目唯一の必修授業となっていることからも、カリキュラム内においてのその重要性が伺えます。自身のMBA受験を思い出すと、受験生の皆様はまさにエッセイ、インタビューの練習を行われているところだと思いますが、今回の内容が少しでも役に立てば幸いです。

 MBAでは往々にして明確な結論がないことを議論する機会があります。本校ではManagementにおいてIntegrityはFinanceやAccounting、Strategyと同等に重要な要素と位置付けており、本クラスも全生徒が受講を義務付けられています。Integrityは直訳すると誠実であること、道徳的な規範を持つこととなりますが、当スクールでは「外部からの強いプレッシャーや(個人の)リスクに直面しても、個人の信念や我々が共有する価値観を順守して行動すること」と定義し、素晴らしいリーダーになるために必要且つ重要な要素と位置付けています。
 クラスの内容としてはゲストスピーカー、ケース、またそれぞれの生徒の実体験に基づいて、様々な組織でのIntegrity、Ethicsにまつわるを議論行いました。教授、ゲストスピーカー、クラスメイトとの対話の中でLeadershipにおけるIntegrityの重要性を腹に落ちるまで議論すること、また自身のIntegrity、Ethicsへの価値観を他者と相対的に評価することで、自己認識を深めることが目的となっています。
 またクラスの最終プロジェクトではチームに分かれて、チームメイトの内一人のEthical dilemmaの実体験をCaseとして書き上げ、それについて議論します。私のチームは米系投資銀行の中国支店で勤務していたクラスメイトの実体験について扱いました。内容としてはそのクラスメイトは投資銀行でコンプライアンスマネージャーとして勤務、そのときに親友で同社に働いているトレーダーが自身の取引をすることは認められないにも拘らず、親戚の口座を使って自身の利益になる取引を行っていることを発見します。その不正取引をしている友人は社内で大きな後ろ盾を持っている可能性があること、中国におけるguanxi(上司や政府など権力者と関係を築くことによって、物事が簡単に進めることができる)の重要性、トレーダーグループでは上司含めた暗黙の了解の中で同様の取引が横行している可能性があることなど、議論を複雑にするバックグラウンドがありました。
 議論の内容は多岐にわたりました。「親友の後ろ盾によって自身の社内での立場が危ういものにならないか?またリスクにどう対処すべきか?(どのように誰に報告するか?)」、「中国にある米系会社という中で考慮すべことは?例えば、アメリカ人を巻き込むことで中国的価値観を超えてEthicalな決断を優先できるのではないか?」、「親友であるという点は判断に影響するか?」、「コンプライアンスマネージャーでなければどうか?」等様々な観点でチームでの結論を議論します。異なるバックグラウンド(文化面、キャリア面共に)を持つチームメイトと自身の価値観によって答えが左右される内容を議論することで、無意識に当たり前と考えていた自身の価値観、Integrityへの考え方を自己評価することができ、Integrityの重要性について改めて見直す良いきっかけとなりました。また決まった答えがないからこそ、一つの答えを出すにはチームメイト一人一人を理解する必要があり、Diversityとは文化等のバックグラウンドを超えて一人一人の価値観の多様性、またそれを認め合うことだと気付かされた良い機会でもありました。

 海外MBAでは知識習得だけでなく、自身の無意識に当たり前になっていることを見直すことを通じて、人間力をレベルアップできる良い機会であったとと考えています。答えがないことを考え抜き、チームメイト一人一人と向き合った機会を与えてくれたこのクラスはこの一年半の中でもベストクラスの一つでした。