米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2012年1月29日日曜日

カーター元大統領の講演会

先日、エモリー大学内で開かれた、元アメリカ合衆国大統領のジミー・カーターの講演会に行って来ました。



カーターって誰だっけ…、という人へ、簡単な紹介です。

・1924年 エモリー大学があるジョージア州で、ピーナッツ農家に生まれる

・1971-1975年 ジョージア州知事

・1977-1981年 アメリカ合衆国大統領 

冷戦のさなか「人権外交」を標榜し、中東において長年対立していたエジプトとイスラエルの間の和平協定「キャンプデービッド合意」を締結させるなど、中東における平和外交を推進

・2002年 ノーベル平和賞受賞



いやー、元アメリカ大統領でノーベル平和賞って、かなりの大物ですよね。私が今まで生で見たことがある人間の中で、間違いなくダントツの超大物です。8年前に名古屋の繁華街・栄でにしきのあきらとすれ違った時に、当時社会人1年目だった私はその眩いばかりのオーラに圧倒された思い出がありますが、カーター級の大物だとどれほどのオーラを発しているのか、ワクワクしながら講演会に出席しました。

大統領時代のカーターと、スター時代のにしきの

   




当日は、聴講者は50名ほどの小規模な講演会でした。時間前に会場入りすると、カーターが講演する舞台はまさに目と鼻の先にあります。これは贅沢だな~と思いながら待っていると、カーターが来ました。その第一印象は一言、だいぶ おじいちゃんじゃん!覚束ない足取りで、ヨタヨタしながら登壇しています…、カーター大丈夫かい?



1時間の予定の講演会でしたが、カーターは3分程度で軽い自己紹介を済ませると、おもむろに「質問はないかい?」と言い出しました。おいおい、残り57分質問対応でつなぐ気か、ていうか おじいちゃんまともに受け答えできるのかい…。不安は募るばかりです。

現在のカーター





当日は、アメリカ国籍ではないインターナショナルスチューデントを集めた講演会でしたが、世界中から集まっている多国籍な生徒たちが、矢継ぎ早にカーターに質問を投げかけはじめました。

韓国人「北朝鮮の新しいリーダーについてどう思うか?」

イラン人「アメリカのイランへの制裁は正しいと思うか?」

中国人「資本主義は正しいと思うか?」

チベット人「中国によるチベットへの弾圧を止めるように働きかけてもらえますよね?」

などなど…。



こんな質問、自分なら何一つまともに答えられない気がします

しかし、やはりアメリカ大統領はすごかった!!!カーターは淀みなく、力強い言葉で自分の考えを述べていきます。現役を退いた今もなお、世界情勢にアンテナを張り、自分流のスタンスや解決策を持っていることがすぐに分かりました。上に挙げた質問の他にも、南米人やアフリカ人からも、自国に関する質問が出ていましたが、各国の情勢を踏まえ難なく答えるその姿は、まさに世界を引っ張るリーダー!という感じでした。講演会が終わるころには、足腰の覚束ないおじいちゃんという最初の印象は私の頭からすっかり消え去り、朗々と世界情勢を語るカーターの姿は現役バリバリのリーダーにしか見えませんでした。後で調べてみたらカーターは現在87歳でしたが、実際にしゃべっている時の姿は50~60歳ぐらいに見えました。きっと、これが本物のオーラというものなんでしょうね。





ビジネススクールで学び始めて半年が過ぎましたが、机の上で理論を学ぶだけでは、やはりビジネスの結果に直結するような学びは得られないような気がします。どこのビジネススクールも、ケーススタディやコンサルティングプロジェクトなど、理論偏重にならないような仕組みを提供してくれるものですが、私は今回の講演会のように、世界で活躍するリーダーに直に会って、プレゼンテーションの仕方を生で見て、リーダーとしてのオーラを感じることが、ビジネスで成功するための重要なヒントを与えてくれると考えています。



その点、ゴイズエタビジネススクールのゲスト講演会の量・質は、学生として非常にうれしい限りです。ゴイズエタには、Dean's Leadership Speaker Seriesという、定期的にゲストスピーカーを招く取り組みがあります。この1月はMorgan StanleyのChief Investment Strategist、2月はMcKinseyのDirector、3月はU.S. Congressman、4月はCoca-Colaの元CEOという予定になっており、本当に贅沢です。アメリカに来る前はお目にかかれそうもなかった人たちから、次々と話を聞くことができます。また、今回のカーターの講演会はエモリーのLaw School主催でしたが、このように学部を跨いだ講演会も頻繁に行われており、南部有数の総合大学としてのリソースを、ビジネススクールの学生は満喫できる環境にあります。



アトランタは南部最大の都市であり、またエモリー大学は全米最大規模のアトランタ空港から車で30分という好立地にあるため、忙しいExecutive達も簡単に訪れることができるようです。来週は、通常の授業の中でも、コンサルティングファームのPrincipalやTVコメンテーターがゲストスピーカーとして訪れる予定になっており、これも非常に楽しみです!!

あ~、贅沢だなー



Class of 2013

Ko


2012年1月24日火曜日

Leadership and Organization Strategy

新年明けましておめでとうございます。今年も読者の方々に楽しんでもらえるような記事を書くべく、在校生一同頑張って参りますので、どうぞよろしく願いします。



ここ最近はキャンパスビジットをされる受験生の方も増えてきました。お会いしていると、昨年の今頃は自分も受験活動真最中で寿命を削りながらもがき続けるハードな日々だったなあと嫌な思い出が蘇ります。ハードな日々といえば、この8~12月の約半年も負けず劣らずハードでした。そんなハードな秋学期は基本的にコア(必修)科目を履修していたのですが、いくつか個人的に興味深い授業がありました。以前の記事ではMarketingのコア科目を紹介しましたが、今回はStrategyのコア科目である「Leadership and Organization Strategy」について書こうと思います。



この授業は組織戦略、チームマネジメント、リーダーシップの在り方に関する総論的授業です。Brad Kilally教授が教鞭を取っており、全体的によくオーガナイズされた授業ということで評判でした。内容は下記3つの観点で構成されており、テキストと実在の企業(Dell, Wal-Mart, P&Gなど)のケースをもとに、各自分析して授業で議論するというスタイルで進められました。3つの観点について説明しますと以下のような感じです。



#1. 企業の強み分析

企業戦略を検討するための材料として企業の強み、つまり差別化要因を見極める手法を主に学習しました。具体的には5フォース分析、ARC分析

といったフレームワークや、垂直/水平統合などの概念を活用し、差別化の要因を外部/内部の両面から評価するというものです。その要因は低価格、高品質、企業文化、人材活用など多岐にわたりますが、それらの要因分析手法を、議論を交えながら学びました。



#2. チームマネジメント

組織戦略を効果的に実行するためのチームの在り方について学びました。いわゆる信頼関係の重要性やチームワーク構築のポイント等です。



#3. リーダシップ論

#2と強く関連する所ですが、リーダーとして意識すべきこと、部下の能力発揮を促進するための心得などを学びます。例えば、権限執行のスタイルの分類(authoritativeとかdemocraticとか)、権威が人間のモラルをいかに低下させるかといった話です。ケースとしてはWorldcomなどがあり、掻い摘んで言うと「下手な振る舞い方をすると部下の能力・モラルが落ちて大変なことになるよ」という内容でした。失敗から学ぶ系が多かったのですが、欧米は成功から学ぶスタイルが主流と聞いていましたので個人的にちょっと意外でした。



ただし、これら3つの観点で構成されているものの、#1の企業分析フレームワークを活用するための授業がメインで7割くらい、その他は3割といった比重でした。また、2,3は1に比べるとソフトスキルの範疇が大きく、概念的には理解できても実践は難しい分野だと思います。自身の経験/個性だけでなく、状況、相手の個性に応じて、正解が変わってくる世界なので、むずがゆさを覚える同級生も結構いるようでした。



いずれにせよこの授業は分析→戦略決定→実行といった流れと上記の各軸を合わせて学ぶ構成で、この構成を意識しながら学習している感覚が持てたので、本当によくできた授業だなあと感心しました。正直、個人的には日本の大学の授業では考えられないレベルだと思います(サボりの多い典型的なダメ学生だったから気づかなかっただけかもしれませんが・・・)。またInternational Studentへの配慮なのか、授業の内容はちゃんと電子ファイルにまとめて配布されるので、リスニングがダメな私には本当に助かりました。



反面、宿題(読み物)が多い、コールドコール(教授が無作為に指名して答えさせること)がある、試験が難しいなど、その負荷の高さも随一であり、テストの後はこんな気分でした。







これもMBAの醍醐味なのでしょうが、今学期はこうならないことをただただ祈るのみです。



Class of 2013 A