こんにちは、Class
of 2018のICHIです。
今回は私が2年生の春学期に受講した選択科目のBusiness and Societyという授業についてご紹介したいと思います。
この授業では、マイケル・ポーター氏が提唱するCSV(Creating Shared Value)という経営戦略のフレームワークを使ってグローバル企業のケースを学びます。CSVとは「企業は利益を最大化することと社会の課題を解決することを両立させることによって社会的な価値を創造し、国際的な競争力を高めることができる」という考え方です。私自身この授業を受けるまであまり馴染みがなく、企業の利益の最大化と社会問題の解決は相入れないことのように捉えてしまっていましたが、CSVの考え方は、適正な規制は企業活動の効率化や技術革新を促すため、規制を実施していない国や地域の企業よりも競争力を高めることができるという仮説を前提としているようです。
企業の社会性を説いた概念の中で、(おそらく日本ではCSVよりも一般的な)CSR(Corporate Social Responsibility)という考え方があります。CSRは企業が寄付やボランティアなどの社会貢献活動を通じてStakeholderとの良好な関係を築くことを目的としていますが、その活動自体は企業の事業との相関関係がほとんどなく、企業の利益を生み出すことを目的としていません。それに対して、CSVはその企業の持つ経営資源を活かして、ビジネスを展開しながら経済条件を整えたり社会問題を解決することにより、企業の生産性を高めることができるという考えです。
今回の授業の中ではCSVの例としてNestle、Hewlett-Packard、Phillip Morris、Royal Dutch Shell、H&M、Kentucky Fried Chicken(KFC) などのケースを勉強しました。
NestleやKFCなどの食品関連企業は途上国でのビジネスに成功したものの、消費者の生活スタイルや栄養状態を急激に悪化させてしまったとして先進国の研究機関から指摘を受け、その内容はメディアにも大きく取り上げられます。
またH&Mなどの衣料品メーカーはコストを抑えるためにバングラデシュの下請け企業に発注をしていましたが、その中のひとつ“Rana
Plaza”という下請け工場が建築の安全基準を満たしていなかったために崩壊し、多くの従業員が死亡してしまうという悲惨な事故を起こしてしまいます。H&Mは発注元企業としてサプライチェーンの改善を人権団体から要求されます。
この授業では、このような過去の企業の事例を用いて経営者として何をすべきだったかを学ぶだけではなく、もし仮に問題が起きてしまった場合に、消費者、サプライチェーン、国や自治体、NGO、国際機関、マスコミなどのStakeholderに対して、どのように対応すれば企業として社会問題を解決できるのかをStakeholder’s mappingという手法を用いて探っていきます。
担当教授はWesley Longhofer教授です。(https://goizueta.emory.edu/faculty/profiles/display.aspx?username=longhofer_wesley)教授陣の中では比較的若いWesley教授の授業は非常にユニークで面白く、同じ授業を受講していた同級生からの評判も大変よかったです。また、この授業はMBAの学生だけでなく経済学を専攻する学生も一緒に受講している珍しいクラスでした。
ビジネススクールでは概してファイナンスやマーケティング、オペレーションなどの観点から企業の利益を最大化させるためのフレームワークやツールを学ぶので、「利益の最大化とともに社会問題の解決をすることで国際競争力を高める」というマインドセットや過去の様々な事例を学べたことは私にとっては大変新鮮で貴重な経験でした。
私的な視点からの授業紹介となりましたが、受験生の皆さんにとってGoizuetaの授業について少しでも理解を深めるきっかけとなりましたら幸いです。
最後になりましたが、このブログをご覧いただいている受験生の皆さんの中には無事に受験期間を終えようとしている方や、まだ進学先を決めかねている方など様々いらっしゃると思います。
もし当校についてご質問がありましたら日本人会メーリングリストまでご連絡ください。受験生の皆さんにとって納得のいく結果になることをお祈りしています。