米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2017年1月1日日曜日

短期交換留学の授業内容(ウィーン編)



こんにちは。2-year MBA Class of 2017Kです。先日、Hinaから短期交換プログラムについて紹介があったと思いますが、私も同期間に同じプログラムに参加してきました。参加した目的はヨーロッパやアジアの授業スタイルに参加、より多様性のあるクラスで学ぶ事により、アメリカでは得られない経験や知見を広げたいと考えたからなのですが、私と同じクラスにいた学生は、中国、台湾、ベトナム、ナイジェリア、ノルウェー、ドイツ、イタリア、イギリス、トルコ、シンガポール、オーストラリア、カナダ、アメリカから来ており、バックグラウンドも様々で、多様な構成となっていました。簡単に私が受講した授業について紹介させていただきます。

〇Global Talent Management1週目)
 ベルギーの女性教授によるタレントマネジメントに関する授業です。当初は実践的な知見、スキルを得る事を期待していましたが、本授業は既往の研究により明らかになった事実、統計的なデータについて知識を深めるという内容でした。教授自体が研究者という事もあり、実践的な知識を得る、スキルを磨くという点では少し満足度が低い授業となってしまいました。一方で、国や文化の違いによるビジネス慣習の違いに関する論文も複数扱ったため、興味のあった文化の違いやビジネス慣習の違いについて知識ベースで得る事がたくさんあった事は大きな収穫だったと思います。本コースのメインテーマはタレントについてInclusive/Exclusive, Developable/stableの組み合わせによる4タイプに分けて、チームディスカッション、最終プレゼンを行うものでした。それぞれの組み合わせについて、メリット/デメリットを既往の研究成果を引用しながら説明していくものです。私はExclusive/Developableのチームに所属しましたが、例えばこのタイプのメリットとして、組織へのコミットメントが高く、離職率が低い、仕事の満足度が高い、高い成果要求に対しての耐用度が高いといったものがあり、多くの日本の企業がこのカテゴリーに基づいた社内教育等を行っているかと思います。日本人には理解のできるカテゴリーですが、やはりビジネス慣習の違いによって、タレントマネジメントの手法も変わるようです。例えば、アメリカでは企業はトップダウンでの意思決定を行う、職を転々とする、役員と社員の給与格差が大きい(既往の研究では350:1というデータもあり)等の背景から、才能のある限られた人材だけにその能力を伸ばす教育を集中的に行うという考え方が一般的なようです。日本のようにボトムアップベースで極力平等に均一に教育する方針とは真逆の考え方です。カテゴリー毎にメリット/デメリットがあり、文化、ビジネス慣習によって適応が異なってくるため、特定の結論は無かったのですが、タレントマネジメントの基礎的研究の知見は得られたと思います。

〇International Financial Management2週目)
 為替、各種オプションを主に扱った授業です。WUの教授が担当し、ドイツ語訛りの英語で淡々と進めるレクチャースタイルで、日本の大学の授業に雰囲気が似ています。Global Talent Managementの授業もそうだったのですが、アメリカの授業に比べるとあまりインタラクティブな進め方ではなく、スタイルの違いが明確に分かります。また、学生についても同じで、アメリカでは講義中に間髪入れずに質問、主張を繰り返しますが、アメリカ、オーストラリア、カナダ以外の学生は比較的日本のスタイルに似ており、しっかり授業の内容を聞いていますが、質問や意見を主張するには少し消極的な印象でした。授業内容については、残念ながら新たな視点は少なかったのですが、物事をヨーロッパベースで考える視点は新鮮でした。(例えば、通貨換算でもユーロがベースとなり、換算式の考え方も少し変わってくる点等。アメリカ人は混乱していました。)

〇Global Marketing3週目)
今回の短期交換留学で一番の収穫があった授業です。教授はHong Kong University of Science and TechnologyHKUST)でも教えている中国人で、主にアジアでビジネス展開をする際に文化、宗教や慣習の違いを踏まえて、どのようにマーケティングを行っていくかという事を事例を含めて説明する内容です。特にアメリカのビジネススクールにいる場合、ほとんどのケース題材はアメリカ企業が多く、アメリカの文化やビジネス慣習をベースに話をします。そのため、アジアの事例を扱う事自体まず新鮮に感じたのですが、さらに欧米企業がアジアに進出する際にどのように現地に適応させる戦略を取ったか、成功および失敗事例を見て分析できた点は大きな学びとなりました。まずレクチャーの始めには顔文字で感情表現をする際に西洋は口で表現をする一方、東洋は主に目で表現をするといった違いから、Hofstede’s Cultural Dimensionsという既往の研究による各国による文化的な違いまで、基本的な知識を教えてもらいました。例えば、Individualism Indexという個人主義のレベルの違いを図る指標では、アメリカやオーストラリアといった国々が高いのに対し、日本や中国といった国々が低いという事実については感覚的に知っている事ではありますが、具体的な指標で表現されています。また、ケースでは欧米企業がアジアに進出する際に取った適応戦略や普段ほとんど触れる事のできないアジア企業のケースも多数扱いました。例えば、バービー人形が上海に旗艦店を出した際のケースでは、バービー人形に中国の民族衣装を合わせたり、バービーの家を中国風に変えたりするというものです。しかし、最終的には数年後に撤退するという失敗事例になってしまうのですが、その理由としては中国人の視点ではバービーはスタイルが良すぎる、顔があまりにも違いすぎる等、現地の価値観にフィットできなかったという事があるようです。また、Chow Tai Fookという中国で成功している宝石店のケースでは、中国の文化的な背景をよく知らないと成功しないという事を痛感させられました。中国人のクラスメートとのディスカッションで理解が深まったのですが、中国人は貨幣の価値を信用しておらず、金や宝石といったものに換金する価値観が根強くあるようです。また、Chow Tai Fookは香港、上海を主要店舗として、中国各地にも出店しているのですが、中国人は大都市の店舗で買い物をする傾向があるようです。Chow Tai Fookという中国で有名なブランドでも地方の店舗は信用できないという理由で、わざわざ大都市まで買い物に出かけるというのです。実際、Chow Tai Fookはこのような状況を理解しており、店員の質の向上や対応マニュアルの徹底等、地方各店のサービス満足度向上を図る事に注力しているようです。様々なケースを通じて、新たな視点から多々学ぶ事ができ、非常に満足度の高いクラスでしたが、やはりアジアのビジネスを良く知るにはアジアのビジネススクールで学ぶ事が非常に有益だと改めて感じました(実際にChow Tai FookのケースはHKUSTにて作成されたケースでした)。

 アメリカのほとんどの大学が世界中の大学と提携して交換留学プログラムを提供しているかと思いますので、このような機会を利用してより多様な経験をすることも可能です。

受験生の皆様は受験プロセスの佳境を迎えているところかと思いますが、体調管理にはくれぐれも気を付けて、無事に乗り切れることを願っています!

日本人・中国人クラスメート