米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2006年10月30日月曜日

専門性への機会  Directed Study とは?

ゴイズエタに入学する前、私は多くの金融分野で働くMBAホルダーにこんなことを言われました。



「僕はMBAをとる中で自分の特化したい分野の基本は習得したけれど、それが直接に実務に役立つことはないね。君もMBAを取りに行くようだけど、専門性をMBAに期待してもダメかな。やっぱり実務能力は実務の中で磨かないとね。まあ、英語だけでもちゃんと勉強しておいでよ。」



おそらく、多くのMBA志望者、MBAの学生もこんな話は聞いたことがあるでしょう。しかし、今の自分はそのような意見にはこう答えることができます。



「それはMBAの学校選びに失敗しましたね。僕の在籍するゴイズエタなら専門性も高められますよ。」



ま、現実にこんな失礼なことを口にすることはないのですが、、、。では、ゴイズエタでは専門性を高めるどんな機会があるか御説明しましょう。



ゴイズエタではDirected Studyという科目を選択することができます。これは、学生が特定の教授の指導を受けて自由研究をすることで単位が取得できる、というもので、研究内容・手法などについては一切の制限がありません。これにより、授業ではカバーされていない、より専門性の高い識見についても、教授という専門家の指導の下に効率的に取得することが可能です。



現在このDirected Studyを行っている私が、「やっぱりDirected Studyをやって良かった」と思っている点を挙げてみましょう。



��.大学のデータリソースへのアクセス



どこの学校でもそうでしょうが、MBAの学生がアクセスできるデータベースは非常に限られていて特に金融関係の研究を行うには無理があります。私は金融市場での研究をしたかったので、教授の取り計らいにより、米国の数十のビジネススクールで共同運営するデータベースへのアクセスが認められたことで非常に助かりました。このデータベースを市販価格で買おうとすると、百億円単位のお金がかかるそうで、データの質も量も素晴らしいです。世界中の市場情報が何十年分も簡単にダウンロードできるようになった私は、「このデータを使えばxxっていう投資戦略がBRICS市場でどれくらいのリターンが期待できるかすぐ分かるなあ」などと、色々な研究のタネを見つけて嬉しい悲鳴を上げています。



��.優れた研究者による指導



ゴイズエタの教授陣は実務家出身が多いこともあり、優れて実際的、実務的かつ実証的です。金融経済分野ではロースクールの教授も経済学者も実務に理解のない役に立たない理論家が世界のビッグネームになっていることが多いことを考えると、自分は恵まれた環境にいるな、と日々感じます。下記に自分がお世話になっている教授のHPを挙げておきます。



http://goizueta.emory.edu/faculty/StanimirMarkov/

「研究なんて面倒くさいよ、それよりサッカーしよーぜ」とか言ってる割に着実に業績を上げている優秀な若手研究者。



http://goizueta.emory.edu/faculty/GeorgeBenston/

私のメインの指導教授。金融研究の重鎮で会計・市場規制などの関連分野にも詳しい。今週はFair-Value AccountingのFASB修正案の妥当性について、ワシントンに行って連邦議会で証言してくるとのこと。





��.学外の実務家・研究者へのアクセス



先日指導教授から、こんな話を持ちかけられました。



「最近クレジットデリバティブ市場の需給関係について研究しようと思っているんだ。僕の他にも、FRB(連邦中央銀行)のエコノミストをやっている友人とFDIC(連邦の銀行監督組織)の人間も興味があるみたいだから、一緒に研究しようと思ってるようだけど、君も興味があれば加わるかい?」



私は二つ返事でOKしてしまいました。こんな機会に外国人が加われることはそうそうないでしょう。



私の知るMBAの学生の中には、専門性を高める努力を学外で行うことで、MBAプログラムで満足できない部分を補う方が多くいらっしゃいますが、やはり、個人の努力は効率が悪いケースが多いようです。Directed Studyはゴイズエタのスクールが持つリソースと学外へのアクセスを全て活用できる点において、効率的かつ可能性の閉じていない優れた機会だと思います。



橋本 (Class of 2007)