米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2009年12月28日月曜日

Goizuetaで学べるM&A関連科目

M&Aを学習テーマのひとつに掲げていらっしゃるアプリカントの方は少なくないと思います。かく言う私自身がそうでした。そこで今回は当校で学べるM&A関連の授業を紹介させていただきます。



一口にM&Aと言っても、弁護士、会計士、投資銀行家(ファイナンシャルアドバイザー=FA)、コンサルタント、事業会社の担当者など、関わる立場によってどこに重点を置くかは様々ですが、その中でも事業会社のM&A担当者の視点から述べさせていただきます。



まずは企業価値評価(バリュエーション)です。一年時コアの"Corporate/(Managerial) Finance"でDCFの基礎を学んだあと、選択の"Investment Banking"で実際の計算の仕方をマスターすることができます。ただDCFの計算はファイナンスの基礎でもあることから、その他のファイナンスの選択科目でも実際に計算ワークをする機会はたくさんあります。



実際にはバリュエーションの計算自体は決まったフレームがあり、日本のテキストでも十分に自習することができます。重要なのは、DCFの計算結果をどのように経営判断に活かすかというポイントになります。この点については、WACCやCFの成長率について上振れ、下振れなどバリエーションを作って、感度分析する必要があったり、また業界他社のEBITDAに対するディール価格倍率の事例を参考にしたりなど、是々非々で経営判断に最も適する手段を選ぶ必要があります。ビジネススクールの授業でM&Aを学ぶメリットは、日本よりも圧倒的に買収事例が多く、株主利益を鑑みる点において進んでいる米国企業がどのように判断を下しているかを知ることができる点です。この点では、選択の"Advanced Corporate Finance"でも多くの示唆を得ることができます。



事業会社のM&A担当としては、バリュエーションは実際にはそのほとんどをFAが担ってくれることからも、全体の仕事から見ればほんの一部に過ぎません。バリュエーション以前に、そもそもターゲット企業を買収すべきか、あるいはJVを組むなどアライアンスがベターなのか、等を判断しなくてはなりません。MBAの授業としてここに絡んでくるのがいわゆる戦略(ストラテジー)のクラスですが、お勧めなのは、選択の"Corporate Strategy and M&A"です。M&Aの実務的なことはあまりやりませんが、文字通り買収前から買収後までの戦略について学ぶことができます。



買収前の戦略立案と同じくらいかあるいはそれ以上に大切になってくるのが、買収後の事業運営のベース作りです。成否の難易度でいえば買収前の戦略立案以上だと思いますし、実際に買収後の事業運営の拙さが「M&Aの多くが失敗」と言われている所以だと思います。PMI(Post Merger Integration)については、既出の”Corporate Strategy and M&A”でも多少扱われますが、十分ではありませんし、PMIに強くフォーカスしている授業も残念ながらほとんどないようです。これは、例えばFAの立場からすれば買収契約が交わされるところで彼らの任務も終わるため、ニーズとしては事業会社とコンサルくらいに絞られるということもあるのだと思います。人的資源のマネジメントにフォーカスした授業としては、選択の"Leading and Managing Change"という授業があります。



話がややそれますが、例えば上記のPMIの例のように、あるテーマに特化して深く掘り下げたいが該当する授業が見当たらないという場合には、"Directed Study"という選択科目を利用することができます。これは、当該内容を指導してくれる教授を見つけ、マン・ツー・マン指導の下、リサーチをしてレポートを書き上げるという少し変わった授業です。単位は他の選択科目同様の3ポイントが与えられます。



M&Aは、日本と米国でやり方が異なる点も多いのが実情です。特に、レブロン判決を慣習とする米国では金額の絶対値で白黒はっきりつけ、株主利益を最大限に尊重する傾向があるのに対し、日本では金額だけでは全てが決まらないグレーな部分が多く、それが例え入札で争われたとしても、両国では攻め方のポイントが異なると思います。その意味では、日本でM&A実務を担うには、GCAの佐山氏や一橋の服部先生のような日本のM&Aの第一人者からも学ぶ必要があると思います。しかしながらそれでも米国のビジネススクールで学ぶメリットは、「米国企業の攻め方が分かる」ということで、海外で買収案件を争う日本企業に関わる方には必須の内容となっており、当校では上記の授業を始め、クラブ活動など含めそれらを勉強できる環境が十分に整っていると思います。





Class of 2010

HT