米国アトランタにあるエモリー大学ゴイズエタビジネススクール(Emory University Goizueta Business School)の日本人在校生によるブログです。

当校のプログラムやアトランタでの生活について書いています。

2014年6月2日月曜日

マーケティング・アナリティクス

情報技術の進展により情報の収集・保管が容易となる一方で、無償統計ソフトRの開発や安価でハイスペックなPCの普及などにより、高度なデータ分析インフラも整備されてきました。こうしたなか、統計処理を含めたデータ分析を通じて、マーケティングの高度化を行うマーケティングアナリティクスが注目を集めています。

ゴイズエタでも近年マーケティングアナリティクスに力を入れており、Emory Marketing Analytics Centerでは関連トピックに関する研究や授業を通じた学生へのフィードバック、企業によるプレゼンが行われるMAC Conferenceの他、本題のハンズオン型授業であるMarketing Analytics Consultancyを提供しています。

Marketing Analytics Consultancyは2013年からスタートしたプロジェクト系授業であり、アトランタベースの企業が保有する実データを分析し、多変量解析によるモデリングやそこから得られる知見を元にして企業に対するマーケティング提案を行います。2014年は担当教授Manish TripathiDavid Schweidelの下、以下の5つのプロジェクトが行われました。

>>> Twitterによるプロモーションの効果分析

>>> プロスポーツのシーズンチケット購入に関わる顧客行動分析


>>> スポーツ観戦に関する顧客満足度調査


>>> テレビ番組の視聴動向


>>> ソーシャルメディアを用いた新たなマーケティング手法の提案


5名で構成される各チームはそれぞれのプロジェクトを概ね2週間単位で行うこととなっており、データ取得から約2週間後に企業や教授に対してプレゼンを行います。必要とされるスキルセットは、統計解析・ITスキル、仮説構築能力、マーケティングセンス、プレゼン能力、そして夜を徹してデータと戯れる持続力です。(夜な夜なデータを弄りながらスクリーニングとモデリングを繰り返して、説得力のあるモデルが出来たときは気持ちいいですね。)

統計やITなど理系的な側面が強そうな分野ではありますが、実際には分析のやり方を覚えてしまえば後は同じ作業を繰り返すことになるだけなので、エクセルを使うこととそれほど大きな違いはありません。むしろ、異種なものを関連付ける発想力やデータ分析の過程で得られる気づきが重要になり、文理問わず必要とされる洞察力や仮説構築力が重要な要素になると思います。



事前に立てた仮説をデータ分析で検証することもあれば、データ分析をしていくなかで思わぬ相関性に気づき仮説を組み立てていく場合もあります。モデルで有意となった要因の分析や外部データとの統合など仮説を立てて何度も検証作業を行うことが必要となります。そのため、仮説を立てる力と同時に膨大なデータを素早く処理する能力も必要となり、エクセルだけでなく、RやSAS、JMPなどの統計解析ソフトを使うことが必要となります。また、プレゼンテーションに向けてTableauを使ってグラフ化することも推奨されました。

統計解析を使って構築したモデルの説明能力に疑問を感じることも少なくないので、マーケティングアナリティクスを使ったからと言って、常にベストな戦略を導けるわけではないと思います。むしろ、こうしたデータ分析を通じて客観的な証拠を積み上げることで、組織内で納得感が生まれ、意思決定を促進したり、社内外に対して説明責任を果たしやすくなる働きが大きいのではないかと思います。

コアのData and Decision Analysisで統計解析の基礎を学んだ後、選択科目のMarket IntelligenceとMarketing Analytics Consultancyを並行して受講することで、データ分析についてかなり修得できるのではないかと思います。更にはMAC Conferenceで企業のデータ活用方法について理解を深め、今秋開講予定のAdvanced Data Scienceでデータ分析スキルに磨きをかけることで、データサイエンティストとしてのベースを築くのもゴイズエタビジネススクールにおける1つのキャリアルートになります。


マーシー